ピアノ曲紹介

これまで私がコンサートなどで演奏した中でも大好きな曲の一つ、ショパン 幻想即興曲についてご紹介します

ショパン 幻想即興曲 作品66 Chopin Fantasie-Impromptu Op.66


 再生アイコンをクリックすると演奏を聴けます

ショパン幻想即興曲 Op.66 演奏時間 5m10s (mp3形式256kbps)(禁無断転載)
根本香織&佐藤茜 デュオリサイタル Part 4 でのライブ録音 (2007年11月16日 アミュゼ柏)
 

ピアノの曲」といえばショパン、ショパンといえば幻想即興曲

 「ピアノの曲」といえば、まず、ショパンの名前が出てきます。ショパンはピアノの詩人とも呼ばれ、多くの人に愛されてきています。 みんなが好きだから、そして私自身もショパンの曲が大好きだからこそ、演奏者として演奏するときにかなり緊張します。

 その魅力はなんといっても
    - メロディーの美しさ
    - 独特な和音の響き
    - 悲しみ・絶望のあとにある希望・・・
それらが重なり合う音楽です。演奏している間に、時には涙が出そうになったり、空から音が降り注ぐような感じがしたりします。

 そのショパンの数ある曲の中でも、最も人気のある曲の一つが、この幻想即興曲です。 ショパンの曲とは知らなくても、クラシックピアノの曲になじみの薄い方でも、だれしもがどこかで聞いたことがあるでしょう。 フィギュアスケートの浅田真央選手が2007~2008年にフリースケーティングで使用したりしていましたね。また多くのピアノコンサートでも好んで弾かれることが多い曲です。

 

 この曲は、
 A - B - A' - Coda
という構成になっており、A'に戻ったところは冒頭のAとほぼ同じで、ショパンの4つある即興曲の中では変化が少なくわかりやすいほうだと思います。

 

 A:演奏箇所 0m00s~1m04s

  印象的な心に衝撃が走ったような左手の低いオクターブで曲は幕開けします。この一音で一瞬にして空気が緊張します。 つづいて竜巻のように心が荒れ狂い(恋い焦がれるような)、感情の激流に翻弄されるような感じで、左手の3連符の上に、息をもつかせぬメロディーが右手に流れます。色で言うと濃い赤(ワインレッド)のような印象があります。

 B:演奏箇所 1m04s~3m24s

  Aの激流とうって変って、明るく心穏やかになり希望がみられます。朗々と流れる旋律のあとA'の急速な流れに戻ります。Bは同じ旋律が何度も出てきて心の変化を表現する手法や、独特の和音の響きの美しさなど、ショパンらしさがよく表れています。

 A': 演奏箇所 3m24s~4m20s

  再び冒頭部Aの激情を思い返すような感じで、激しく荒れ狂います。少しAよりテンポが速いです。

 Coda: 演奏箇所 4m20s~5m20s

  Bのメロディーが左手に少しだけでてきて幻のように回想します。だんだんと最後に向かって落ち着き、そして優美な和音で静かに終わります。

 

 演奏者にとっては、何度も繰り返されるメロディーをどう変化しようか? 心の激情ぶりをどうやってメロディーにのせようか?と悩むところが多いです。BからA'に戻ってきたときに、変化が少ないため、人によってはものたりないと感じる場合もあり、中間部から戻ってきたところをどう聞かせるかが難しいと感じています。

 

2つのショパンン幻想即興曲

 幻想即興曲(即興曲第4番)は、ショパンの死後1855年に友人のフォンタナによって出版されました。出版されたのは4曲の即興曲のうち一番最後ですが、1834年~1935年ごろの作品とされ、即興曲第1番より前に作曲されています。ショパン自身が出版しなかった理由は定かではありませんが、彼の存命中は出版されることはありませんでした。ショパンの死後、友人のフォンタナが校正し出版したことで、多くの人にに「ショパンの幻想即興曲」として知られるようになりました。この題名の“幻想”も出版の際にフォンタナがつけたものです。

 実はこのフォンタナが出版した「フォンタナ版幻想即興曲」とは別に、ショパン自身の決定稿とされる自筆譜が存在していることが分かっています。この自筆譜をもとにした版は、1962年にピアニストのアルトゥール・ルービンシュタインが出版したため、ルービンシュタイン版幻想即興曲とも呼ばれています。

 フォンタナ版をもとにピアニストの見識ある意見をもとに校訂した楽譜や、できるだけショパンの意図を汲み取ろうと自筆譜や初版譜から原典を復元した楽譜など、多くの「ショパン幻想即興曲」が存在しています。多くの人が、それだけこの「幻想即興曲」に強い思い入れを持っているあらわれなのでしょう。

 この繰り返されるメロディーの美しさが、人を魅了してやまないのではないかと、私は思います。